大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 平成6年(ワ)11488号 判決

原告

納戸重行

ほか五名

被告

三日月タクシー株式会社

ほか三名

主文

一  被告らは、連帯して原告納戸重行に対し金三〇八万七三七三円、原告納戸慶博に対し金一九三万一四七四円、原告納戸敬秋、原告納戸一義、原告納戸惠及び原告前田京子に対し各金六一万一四七四円、並びにこれらに対する平成四年六月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、原告納戸重行に対し、連帯して金一一四万二六四〇円及びこれに対する平成四年六月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを五分し、その一を被告らの、その余を原告らの負担とする。

五  この判決は、原告ら勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告らの請求

(甲事件)

被告らは、各自原告納戸重行に対し金一七七九万七〇三三円、原告納戸慶博に対し金五〇五万九四〇六円、原告納戸敬秋、原告納戸一義、原告納戸惠及び原告前田京子に対し各金三六五万九四〇六円、並びにこれらに対する平成四年六月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(乙事件)

被告らは、原告納戸重行に対し、連帯して金四四一万四三五〇円及びこれに対する平成四年六月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  本件は、交差点を右折中の普通乗用自動車(タクシー)と対向直進中の普通貨物自動車が衝突した事故に関し、タクシーに乗客として同乗していた被害者及びその遺族らが、各自動車の運転者に対し民法七〇九条に基づき、右運転者の使用者兼各自動車の保有者に対し、民法七一五条、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条に基づき、損害賠償を求めた事案である。

二  争いのない事実等

1  次の交通事故が発生した(以下「本件事故」という。)。

(一) 日時 平成四年六月三〇日午前一〇時一五分ころ

(二) 場所 大阪市東淀川区西淡路五丁目一九番四号先路上(以下「本件現場」という。)

(三) 加害車〈1〉 被告三日月タクシー株式会社(以下「被告三日月タクシー」という。)が保有し、被告土居千津子(以下「被告土居」という。)が運転する普通乗用自動車(なにわ五五う七〇〇、以下「被告タクシー」といい、右被告らを「被告土居ら」という。)

(四) 加害車〈2〉 被告市が保有し、被告十川正敏(以下「被告十川」という。)が運転する普通貨物自動車(なにわ八八さ一九七三、以下「被告十川車」といい、右被告らを「被告十川ら」という。)

(五) 事故態様 被告十川車が本件現場の交差点を東から西へ直進中、折から同交差点を西から南へ右折中の被告タクシーと衝突し、被告タクシーに乗客として同乗していた納戸靜子(以下「靜子」という。)と原告納戸重行(以下「原告重行」という。)が負傷したもの

2  被告土居らの責任

(一) 被告土居は、本件事故発生につき、前方不注視の過失があるから、民法七〇九条により損害賠償責任を負担する。

(二) 被告三日月タクシーは、被告土居の使用者であるとともに被告タクシーの保有者であるから、民法七一五条、自賠法三条により損害賠償責任を負担する。

3  原告らの地位

原告重行は靜子の夫、その余の原告らはいずれも靜子の子てあり、靜子の死亡によりその財産上の地位を法定相続分に従つて相続した(明らかに争わない。)。

4  損害のてん補

被告らは、原告らに対し、本件事故による損害金として内払金二〇〇万円、自賠責保険金一九三〇万円の合計二一三〇万円を支払つた。

三  争点

1  本件事故と靜子の死亡との因果関係

2  被告十川の過失

3  原告重行の相当治療期間

4  損害

第三争点に対する判断

一  争点1(因果関係)について

1  被告土居らは、靜子の死亡が本件事故からは二年半近く、後遺障害の症状固定日からは九か月以上経過していることをもつて本件事故と靜子の死亡とは因果関係がない旨主張するので以下判断する。

2  前記争いのない事実、証拠(甲二の1ないし3、甲三の1ないし17、四、五の1、2、六、一六、一八、一九、丙六ないし八、原告納戸慶博)及び弁論の全趣旨によれば、靜子は、平成四年六月三〇日、本件事故により受傷し、大阪府立千里救命救急センター(以下「千里救命救急センター」という。)に搬送され、左側頭骨陥凹骨折、頭蓋底骨折、外傷性クモ膜下出血、左鎖骨骨折、左多発肋骨骨折(ⅠないしⅦ)、小脳挫傷、左血気胸・肺挫傷等の診断を受け、右同日、右陥凹骨折に対する整復術が施行されたこと、その後、外傷性クモ膜下出血によつて生じた髄液の吸収障害に起因すると思われる水頭症が発症し、意識レベルの低下が認められたので、同年八月二六日にシヤント術(脳室腹腔短絡術)が施行され、同年九月二二日まで入院治療を受けたこと、その後、リハビリテーシヨンの目的も兼ねて茨木医誠会病院(以下「医誠会病院」という。)に転院して入院し、意識障害の回復のため、同年一〇月九日、シヤント修復術、同月三〇日いシヤント追加術が施行され、一時簡単な言語を単発的に発することもあつたが、しだいに脳萎縮が進行し、ほとんど植物状態になつたこと、その間、肺炎を繰り返し、平成五年末には、腎孟腎炎から播種性血管内血液凝固症候群、敗血症を併発したこと、そして、平成六年二月一八日には、症状固定の診断を受け、意識障害(3―3―9度式JCSにてⅠ群―3、覚醒しているが、名前、生年月日が言えない。)、四肢運動障害により自賠法施行令別表の後遺障害等級表一級三号の、同年六月一日には身体障害者福祉法に基づく身体障害者等級表の等級一級の各認定を受けたこと、しかしながら、同年一一月一六日、肺炎を発症し、同月二六日、退院することなく死亡した(死亡時七一歳)ことが認められる。

3  以上認定した靜子の死亡に至る経過に照らせば、靜子の死亡と本件事故との間には相当因果関係があると認められる。

二  争点2(被告十川の過失)について

1  被告十川らは、中央に広い分離帯がある本件現場交差点の構造からすれば、被告十川は、あらかじめ右折してくる被告タクシーに気付くことは不可能であり、被告十川に被告タクシーの発見の遅れはないし、被告タクシー発見後は、被告タクシーの方が対向直進する自車に気付き、停止すると考えても無理はないこと等から被告十川には過失はない旨主張するので以下判断する。

2  前記争いのない事実及び証拠(丙一、九なしい一五)によれば、以下の事実が認められる。

(一) 本件現場は、東西道路と南北道路が交わる信号機のある交差点であり、付近の状況は別紙図面のとおりである。東西道路は、片側二車線(車線幅三ないし三・五メートル)で、幅九・四メートルの中央分離帯がある。中央分離帯は、道路との段差が〇・二メートルで、周囲には鉄棚が設けられ、その中央部分(幅四・八メートル)に高さ一・六メートルの植込みがあるため、左右の見通しは悪い。速度規制は時速四〇キロメートルである。南北道路は、交差点南側の道路が片側一車線(車線幅三・三メートル)である。いずれの道路もアスフアルトで舗装された平坦な路面であつたが、本件事故当時は雨で路面は湿潤していた。

(二) 被告十川は、被告十川車(ゴミ収集車で、積載量一七五〇キログラム、車両重量三三七〇キログラム)を運転して西淡路方向にゴミ収集に向かうため、東西道路西行きの中央分離帯寄りの車線をワイパーを作動させ、時速約六〇キロメートルで走行中、図面アで本件現場交差点の対面青信号を確認し、図面イで同交差点を右折しようとしていた図面〈3〉の被告タクシーを右斜め前方三四・二メートルに発見し、急ブレーキをかけてハンドルを左にきつたが、図面〈×〉で自車前部が被告タクシーの左後部ドア付近と衝突した。

(三) 被告土居は、乗客として後部座席の運転席側に原告重行、助手席側に靜子を乗せて東西道路東行きの中央分離帯寄りの車線をワイパーを作動させ、時速約四五キロメートルて進行し、本件現場交差点の対面青信号を確認し、同交差点を右折するため図面〈1〉で右折の指示を出して減速し、図面〈2〉で右にハンドルをきり、時速約二〇キロメートルで右折中、図面〈4〉で対向直進する図面ウの被告十川車(その間の距離九・一メートル)を発見し、衝突を回避するため加速したが、図面〈×〉で右のとおり衝突した。

3  以上の事実によれば、本件事故の主な原因は、被告土居が本件現場交差点を右折するにあたり、対向車線方向に中央分離帯の植込みがあつて見通しが悪かつたにもかかわらず、対向車線に進入する前に一時停止をするなどして対向直進車の有無、動静を確認すべき注意義務を怠つたことにあるが、被告十川にも、同交差点に進入するにあたり、同様に右植込みにより対向車線方向の見通しが悪く、右折車の有無、動静が把握しにくい状況であつたにもかかわらず、右折車に対する安全確認を十分に行わず、制限速度を二〇キロメートル超過する速度で直進した過失があると認められる(なお、前記認定した事故態様に照らせば、双方の過失割合は、被告十川が一・五割、被告土居が八・五割とするのが相当である。)。

三  争点3(原告重行の相当治療期間)について

1  原告重行は、本件事故により負つた傷害の治療期間として平成六年二月四日までを主張し、特に被告土居らは、本件事故と相当因果関係のある治療期間は平成四年一一月末までである旨主張するので以下判断する。

2  証拠(甲二の4、九ないし一四、二〇、乙二、丙二ないし五)によれば、原告重行は、平成四年六月三〇日、本件事故により頭部切創、口腔内切創、胸部打撲の傷害を受け、千里救命救急センターに搬送されて入院し、右切創につき縫合処置を施され、保存的治療により右症状が軽減し、同年七月三日退院し、全治約二週間を要する見込みと診断されたこと、しかし、同年八月五日から同年九月一八日まで、腰部打撲、腰椎分離辷り症の病名で薬物及び理学療法が施されていたが、平成四年九月二四日、医誠会病院に転院し、右同様の病名で平成六年二月四日まで通院(実日数二六七日間)し、投薬、神経幹内注射の治療とリハビリテーシヨンを受けたこと、警察からの照会に対し、千里救命救急センターの担当医師は、平成四年九月二一日付けで「本件事故後から腰痛が持続していると原告重行が訴えているから、本件事故による腰痛の増悪は否定できないが、本件事故とは無関係に腰椎辷り症があつたことは事実であり、現在の症状のすべてを事故によるものとすることは不可能である。今後二か月ほど経過をみた上で症状固定等を判定したい。」旨回答したことが認められる。

3  以上の認定した受傷部位、治療経過に照らせば、千里救命救急センター退院後、同センター及び医誠会病院での通院治療は、既往症の腰椎分離辷り症によるものであり、原告重行の本件事故後から腰痛があつたとの訴えに基づき、本件事故により右症状の増悪があつたとしても、右症状の治療が施されたのが本件事故から一か月以上過ぎた時期からであつたことに照らせば、本件事故と相当因果関係のある治療期間は遅くとも平成四年一一月末まで(実日数五二日間)と認めるのが相当である。

四  争点4(損害)について(円未満切捨て)

(甲事件)

1 入院雑費(請求額六六万八二〇〇円) 六六万八二〇〇円

靜子は、前記一、2のとおり、千里救命救急センター及び医誠会において平成四年六月三〇日から平成六年一一月二六日まで入院治療を受けたのであり、原告らは、その期間のうち五一四日間の入院雑費を求めるものであるところ、一日当たりの右雑費は一三〇〇円を認めるのが相当であるから、右雑費は、六六万八二〇〇円となる。

2 入院付添費(請求額二五七万円) 一〇二万八〇〇〇円

原告らは、受傷から症状固定日までの前記入院期間中五一四日の付添看護費を求めるところ、千里救命救急センター及び医誠会病院は、完全看護の体制にある(原告納戸慶博、弁論の全趣旨)ものの、前記した靜子の症状等に照らせば、同人の意識障害の回復のため、少なくとも医誠会病院に入院中、原告ら親族の情愛によるきめ細かい付添看護が必要であり、一日当たりの右費用は、同病院が完全看護であること等の事情から二〇〇〇円程度が相当であるから、右費用は一〇二万八〇〇〇円となる。

3 休業損害(請求額三二〇万三九〇〇円) 一八五万一二五六円

原告らは、右入院期間のうち五一四日間の休業損害を求めるところ、靜子は、本件事故当時、六八歳であり、吹田市穂波町の自宅に夫原告重行と二人で暮らし(子はいずれも独立)、夫の身の回りの世話をしていたこと、本件事故当時、動悸、胸の苦しみ、吐き気、腹痛を訴え、淀川キリスト教病院に来院し、狭心症の疑いがあると診断され、ニトログリセリンを服用するなどの治療を受けていたことが認められ(甲一七、乙一、原告納戸慶博)、右事実によれば、靜子は、夫の身の回りの世話をする限度で主婦業に従事していたといえるが、右主婦業の内容、靜子の年齢、右既往症の病状等に照らせば、平均賃金(平成四年度の女子六八歳以上の年齢別平均給与額表の平均月額二一万六一〇〇円、顕著な事実)の五割程度の収入を得ていたものと認めるのが相当であるから、休業損害は、以下の計算式のとおり一八五万一二五六円となる。

216,100÷30×0.5×514=1,851,256

4 傷害慰謝料(請求額三六三万円) 三五〇万円

靜子の症状固定までの入院期間、傷害の内容等を勘案すれば、三五〇万円を認めるのが相当である。

5 医師等への謝礼(請求額五万〇七一〇円) 五万〇七一〇円

原告らは、靜子に対する治療、看護への謝礼として医師等へ五万〇七一〇円を支払つたことが認められるが(弁論の全趣旨)、前記した靜子の症状、治療内容等に照らせば、社会通念上相当な金額であれば、本件事故と相当因果関係がある損害と認められるところ、右金額は相当なものといえるから、右金額を本件事故による損害と認める。

6 後遺障害逸失利益(請求額主位的主張一三一八万一二五六円、予備的主張一七四万五三三三円) 一〇〇万八四六六円

原告らは、主位的に靜子死亡から就労可能期間七年間にわたる後遺障害逸失利益を主張するが、靜子の死亡と本件事故との相当因果関係を肯定する原告らの主張と矛盾するものであるし、前記のとおり、靜子の死亡と本件事故との相当因果関係を認める以上、後遺障害逸失利益は、症状固定日から靜子の死亡までの期間において認められるべきであり、右主張は採用できない。したがつて、原告らが予備的に主張する右期間における二八〇日間分の後遺障害逸失利益は認められるが、その基礎収入は、前記3の休業損害の収入(平均賃金の五割程度)を前提とすべきであり、また、生活費控除は、靜子が前記した状態であつても生存している以上、控除すべきでない。したがつて、以上の前提に後遺障害逸失利益を算定すると、以下の計算式のとおり、一〇〇万八四六六円となる。

216,100÷30×0.5×280=1,008,466

7 死亡による逸失利益(請求額九二二万六八七九円) 三八〇万八一一四円

靜子(死亡時七一歳)は、前記3の平均賃金の五割程度の収入を七一歳から就労可能年数七八歳(平均余命一五・三三年の二分の一の七年間)まで得る蓋然性が認められるところ、本件事故により死亡したのであり、生活費控除率は、前記のとおり靜子が夫と二人暮らしであつたことから五割とするのが相当であるから、ホフマン式計算法で中間利息を控除して右逸失利益を算定すると、以下の計算式のとおり三八〇万八一一四円となる。

216,100×0.5×12×(1-0.5)×5.874=3,808,114

8 後遺障害ないし死亡慰謝料(請求額二七〇〇万円) 一五〇〇万円

原告らは、主位的に後遺障害慰謝料二四〇〇万円、死亡慰謝料三〇〇万円を、予備的に死亡慰謝料二七〇〇万円を主張するが、靜子の前記した死亡に至る治療経過等に照らせば、全体を死亡慰謝料として評価するのが相当であり、前記した本件事故態様、症状固定以後死亡に至る経過、靜子の年齢、既往症等の諸事情を勘案すると、右慰謝料として一五〇〇万円を認めるのが相当である。

9 以上の損害合計は二六九一万四七四六円となるが、前記した既払金合計二一三〇万円を控除すると五六一万四七四六円となり、原告らは、右金額の損害賠償請求権を法定相続分に従つて相続すると以下のとおりとなる。

(一) 原告重行 二八〇万七三七三円

(二) その余の原告ら 各五六万一四七四円

10 原告ら固有の損害

(一) 慰謝料(請求額原告重行につき二〇〇万円、その余の原告ら各五〇万円) 〇円

前記8に認定した死亡慰謝料においてすでに評価済みであるから、原告らの固有の慰謝料は認められない。

(二) 葬儀費用(原告納戸慶博請求額一四〇万円) 一二〇万円

本件事故と相当因果関係のある葬儀費用としては、一二〇万円を認めるのが相当である。

11 弁護士費用(請求額三〇〇万円) 六五万円

本件事案の性質、認容額等を勘案すれば、本件事故と相当因果関係のある原告らの弁護士費用相当損害額は、原告重行につき二八万円、原告納戸慶博につき、一七万円、その余の原告らにつき各五万円の合計六五万円を認めるのが相当である。

(乙事件)

1 入院雑費(請求額五二〇〇円) 五二〇〇円

原告重行は、前記三、2のとおり、平成四年六月三〇日から同年七月三日まで四日間入院し、入院雑費は一日当たり一三〇〇円を認めるのが相当であるから、右雑費は五二〇〇円となる。

2 通院交通費(請求額三一万一九四〇円) 三万七四四〇円

原告重行は、医誠会病院への通院交通費を請求するところ、原告重行の相当治療期間は、前記三に認定のとおり、遅くとも平成四年一一月末まで(実日数五二日間)であり、前記した原告重行の症状、往路はバスと電車を利用していることに照らし、復路も同様の交通機関を利用することが相当であるから、バスと電車による交通費(片道三六〇円、弁論の全趣旨)により通院交通費を算定すると、三万七四四〇円となる。

3 休業損害(二五七万七二一〇円) 〇円

原告重行は、本件事故当時、家事労働に従事していたとして休業損害を請求するが、前記四、3のとおり、原告重行の身の回りの世話は、妻の靜子がしていたものであり、原告重行が家事労働を行つていたことを認めるに足りる証拠はない。仮に、原告重行が家事労働を行つていたとしても、せいぜい靜子の家事を補充する程度のものであろうから、前記三、2の原告重行の症状等に照らし、休業損害は認められない。

4 慰謝料(請求額一一二万円) 一〇〇万円

原告重行の受傷内容、相当治療期間等の事情を勘案すれば、一〇〇万円を認めるのが相当である。

5 弁護士費用(請求額四〇万円) 一〇万円

本件事案の性質、認容額等を勘案すれは、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当損害額は一〇万円を認めるのが相当である。

五  以上によれば、甲事件においては、原告らの請求中、原告重行につき三〇八万七三七三円、原告納戸慶博につき一九三万一四七四円、その余の原告らにつき各六一万一四七四円、及びこれらに対する本件事故日である平成四年六月三〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で、乙事件においては、原告重行の請求は、一一四万二六四〇円及びこれに対する本件事故日である平成四年六月三〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で、それぞれ理由があるから、主文のとおり判決する。

(裁判官 佐々木信俊)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例